Talk & Interview #98「 ZABADAK (2011 SPRING) 」

3月14日に待望のニューアルバム『ひと』をリリースするZABADAKの吉良知彦さんと小峰公子さんへの最新インタビューです。

(2011年2月某日/momentにて/TERA@moment)





  「 ZABADAK (2011 SPRING) 」
 

   Talk&Interview #98
 
  

 
 ZABADAK (2011 SPRING)

TERA@moment(以下:T):momentサイトでは久々のインタビューになります。最初は確か、2004年春です。。。7年前!?ですね。はい。では宜しくお願いいたします!

吉良知彦(以下:Z):よろしくお願いします。

小峰公子(以下:K):こんにちは、もう7年前ですか。あれからいろいろとお世話になってます!

T:こちらこそ御世話になってます! それでは、はじめに。今回のアルバム『ひと』の概要を教えて下さい。

Z:何枚目でしょうか。26.27,28あたりのどこかでしょう。漠然とですが、ギター中心の音楽を作りたいな、と考えていました。「平行世界」以降に書きためた30曲くらいの中から選んだものと。小峰の歌詞がきっかけでできた数曲から出来上がっています。

K:この前何枚目になるのか、マネージャーの利佳ちゃんと数えたんですけどよくわからないんですよね、ベスト盤は除くとしてもビミョウにオリジナルアルバムと言えそうなのもあるし・・でも30枚近くよく作りましたよねえ。
テーマというか、ぼんやりと一瞬の中の永遠性とか、始まりを含んだ終わり、みたいな表裏一体的なもの、宇宙を飛び交う命の声とか・・を表現できたらな、と思っていました。

T:次にタイトルですが、『ひと』。これは?

Z:小峰からその名も「ひと」という詩を受け取り、ギター弾いていたらいきなり曲になりました。こういうことは長い音楽生活の中でもそうあることではありません。この曲も含め、アルバムタイトルは保留のままレコーディングを進めたのですが、最後になってもやはり「ひと」誕生のインパクトが強烈だったので、これでいこう!と。

K:最初、歌詩じゃなくてこのアルバムのテーマとしてのメモ書きのつもりで吉良君に渡したんですよ。そしたら曲がついてきて。
なので、成り立ち的にはタイトルにふさわしいんだけど、これこそzabadakというサウンドかというと、かなりギターサウンドバリバリの曲なんで…そこがタイトルにするかどうかの悩みどころでした。でもシンプルでいいかな。

T:今回のアルバム『ひと』のレコーディングから完成まで、特に苦労された事など何かエピソードありましたか?

Z:数だけはいっぱいあった候補曲からの選抜、でしょうか。レコーディング自体は今までで一番ストレスのない状態で続けることが出来ました。

K:そうね、バランスを考えて入れなかった曲もありますね。スタジオは二ヶ所使ったんですけど、どちらも居心地のいいスタジオでした。敢えて何か辛かったことは…出前のカレーが激辛だったことかなあ!

T:(笑)。なるほど。それでは『ひと』からの楽曲1曲ごとの解説を頂ければと思います。では、まず1曲目の『つまさきからむこうがわ』。

Z:この曲は詩が先です。一読してなんておっかない歌詩だろうとおもました。メロディがつくとこれはもうサイケにするしかないだろうって・・・。きれいなんだけどアヤシイ。心地良いんだけど恐ろしい、そんなような世界を目指しました。

K:テーマ的には前作の「平行世界」に近いです。別の世界、そこはきっとつまさきで線をひいたくらいのほんの少し先、っていう。でもこれが一曲目でいいのかな?というのは今でもあるんです。聴いた人がみんな怖い…って言うので。

T:2曲目の『無限の中のどのあたり』は?

Z:「食い」の多いザバ曲、の典型かもしれません。ギターで気持よくストロークしながら作曲するとしばしばこういう曲が出来上がります。サビのハーモニーが我ながらカッコイイかな、と思っております。

K:リコーダーをフィーチャーした、zabadakサウンド全開のイントロなんですけど、小節のアタマが一聴して取りにくい、その感覚をお楽しみください。私、時間と空間のことを考えるとクラクラしちゃうんですけど、そんなこんなのラブソング。

T:3曲目『Birthday』。

Z:アフリカの夜明けから始まっていきなり都会の夜になる、みたいな音作りをしました。ティンホイッスルをトラッドっぽくなく使ってみよう、という目論見もありました。

K:覚醒をテーマにしてみました。曲を聴いた時からこれは私が歌いたい、と思いました。カッコイイ曲になってると思います!

T:4曲目の『ひと』は?

Z:詩を見た瞬間にできた曲、というのはさっきも言いましたが、その段階でハゲしいギターが頭の中でなっていました。チープなダンエレクトロのギターがその音を忠実に再現してくれました。間奏明けのアレンジはミックス中に思いつきました。僕の思いつきを見事に実現してくれた池内くん、ブラボーです!

K:このアルバムのテーマの覚え書きとして書いたものが元になっていますが、男らしい歌詩が書けたんじゃないかなと思います。

T:5曲目の『Airport』。これは?

Z:昨年富良野のライブの打ち上げで、友人がもの凄く美味しくて何なのか分からないモノをつまみに出してくれました。その時に即興でその感動を歌にしたんですけど、その曲をシラフだったハープの木村林太郎くんが覚えていてくれました。このような状況で誕生する曲は殆どその場で忘れられていく運命なので、この曲はほんとうに幸運です。歌詞はまるで僕のことのようです。1月にフランスに旅立つ小峰を見送りながら、なんだか悔しくなりました。

K:そんなわけでものすごい歌詩が付いた曲だったので、そのイメージを払拭するのが大変で。別れはいつも永遠性をはらんでるなと思うのです。これが最後の「バイバイ」になるんじゃないか、っていつも思う。吉良君は最初、この歌詩「情けない男みたいでイヤ」と言ってたけど、歌詩と実際とは別ものなんだから、って言って。でも案外そのままだったんだね〜

T:曲中の空港SEが雰囲気を凄く盛上げていますね。。では、6曲目『四月の風』。

Z:タイトルのまま、4月の風を浴びながら生まれた曲です。斉藤ネコさんの一本のバイオリンが入ったところからアレンジがどんどん変わっていきました。ただ爽やかだった風がゴウゴウと鳴り出したような気がします。最後の変則小節のメロディは笛を吹いていると胸が熱くなり、鼻の奥がつんとしてきます。

K:アコーディオンで参加しました。今作はアコーディオン一曲だけでしたね。美しい曲です。演奏してても楽しかったです。

T:7曲目の『ひとつの事件』。

Z:カッコいいギターリフからサビでいきなりの16ビートに展開します。思い切らないと乗り移れないゲームに出てくる「離れた橋」のような曲です。思い切れればサイコーにライブ映えする曲になるんじゃないかな。

K:これはずっと前に書いた歌詩を吉良君が発掘してきて。曲がついてからだいぶ書き直しました。サビがなんか懐かしい感じですよね。理系入ったラブソングかな。歌うと気持ちいい曲なんですよ。

T:8曲目『冷たい夜に』ですが。

Z:2009年のラ・カンパニー・アンの「月いづる邦」というお芝居の為に書いた曲。これも詩が先でした。公演中は舞台で何度か涙腺がやばくなりました。

K:劇中では傷ついた兵士に向かって、でもすべての傷ついた人に歌ううたでした。これを歌うときにはいつも座・高円寺の空間を思い出します。

T:次は僕的には一番好きかもしれない、9曲目の『月と金星』は?

Z:おお!それはありがとうございます。僕もとても好きな曲です。出だしのコード進行はかつて無いモノではないか、と密かに自負しています。難関はサビの音域の高さとフレーズの長さですね。息を最大限吸い込んで思いっきり歌わないとこの音程は僕には出せません。結果レコーディングで僕はすごい顔をして歌っていたようですが、ライブでも当然そうなってしまうのが今からすこし心配ではあります。

K:私も実はこれが好きで、今回のアルバムのメイン曲、例えばラジオなどでこのアルバムから一曲かけてもらう時とかの…に選びました。これは説明したくないな。受けとめる方にそれぞれの絵を書いてほしいです。

T:次は大作です、10曲目『水の行方』は?

Z:世田谷を仙川という川が流れていて、ちょいちょい僕はそこを散歩します。鼻歌交じりに歩くのですが、たまにメロディをうちに連れ帰ることが出来ます。そうしてできたいくつかのモチーフを組み合わせて前半が出来上がりました。「仙川の流れ」と仮に読んでいましたが、水つながりで「月いづる邦」で水の循環をテーマにした曲とくっつけてみたらこうなりました。水は仙川から遥かに旅に出て行くことになりました。

K:今ヒマラヤの上に積もっている雪は、私の遠い祖先が流した涙かもしれない、っていうのがテーマかな。水はこの地球をいろんなかたちになって旅してる、っていう。「ハーベスト・レイン」と同じです。これはもう吉良知彦メロディーが炸裂してます。音楽って力だな、って思います。ライヴでやるのかなー。やるんでしょうね。大変そう。

T:最後の曲、『おかえり』は?

Z:ええと、これも詩が先です。なんと今回4曲が詩先ですね。歌モノの半分以上!ZABADAK史上初の出来事です。ギター一本でいけるのでもう何度もライブでやっているんですが、しばしば心が凍りついて折れそうになります。

K:出産して最初に子供を抱いたとき思ったのが、この子の産まれたところは見たけど死ぬところは見られないんだ、ってことでした。子供を産むってそういうことだ、ってまさに肌で理解しました。そうやって命が続いていく。でももしあの世みたいなのがあったら、いつかまた会えて、抱きしめる日が来るのかな、と。今介護で親が子供みたいになっちゃった部分があるんですが、わたしもまたいつかそこでは子供に帰れるかもしれないですね、おかえり、ただいま、って。

T:1曲毎の解説、ありがとうございました。このアルバムを引っさげたライブが2カ所ありますね。4/30が神戸「チキンジョージ」で、5/14が東京・渋谷「プレジャープレジャー」ですね。ファンの方々は既に聴き込んでる時期ですね。どんなライブになりそうですか?

Z:チキンジョージは去年からお馴染みになり、毎回音の良さと打ち上げの楽しさに感激しています。ここに自慢のメンバーを連れて行ってバンドZABADAKを演れることを本当に幸せに思います。渋谷の会場はもと映画館だけあって、他ではありえないゆったりした環境でZABADAKをお楽しみいただけると思います。こちらも楽しみでなりません。

K:派手にいきたいですよねー。ライヴでやるとこんなふうになるんだ!!って驚きがあると思うので、私も楽しみにしてます。

T:楽しみですね!このライブ後の計画などありましたら、教えて下さい。

Z:先日アコーディオンのオランさん、熊谷太輔くん、小峰公子、僕、の4人でやったアコースティック編成が非常に気持よかったのでこの形でもよその町に行きたいな、とか、ハープの林太郎くんともやりたいな。そしてもちろんモーメントカルテットとのセッションもどんどんやりましょうね!

K:ぼつぼつと夏のライヴの予定も決まりそうです。秋頃に新譜じゃないけどリリースもありそうで、また忙しくなりそうな予感です。

T:最後にファンの方々へのメッセージをお願いします。

Z:今年はZABADAK25周年だそうです。すったもんだ喧嘩もしいしい、みんなに助けられながら、えっちらおっちらやってきましたが、当初思った「自分で楽しめる音楽を作る」というZABADAKの根本みたいなものは持ち続けて来れている気がします。ろうそくの炎のようなものかもしれませんが、この火が消えぬ限りZABADAKは続いていくと思います。わりとしつこそうなので皆さんも無理をせず、ゆったりした気持ちでお付き合い下さい。

K:今作からワタクシもメンバーということになったものの、さほど変化はないよなあ、と思っていましたが、こうやって曲の成り立ちなどzabadakとして発言できるようになったのは初めてですね。あ、あと写真がツーショットになってますね。今後とも宜しくお願いします。

T:本日はインタビューに答えて頂きまして、ありがとうございました。momentでは今後も色々とコラボして頂ければと思っております。今後とも宜しくお願いいたします。

Z:モーメントカルテットとのセッションもいよいよ楽しくなってきましたし、これからもTERAさんにはもの凄くお世話になる予定なので引き続きよろしくお願いします!

K:TERAさんにはカッコイイ映像も作っていただいて、そして新しい縁もたくさんいただいて感謝です!今後もよろしくお願いします。


T:大変、恐縮です。宜しくお願いいたします。

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